2012年5月24日 (木)

ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集 ヨゼフ・スーク

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COCQ 83953/56                   SU 4077-2

ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集   ヨゼフ・スーク

ヴァイオリン:ヨゼフ・スーク    ピアノ:ヤン・パネンカ

録音:1966年 ~1967年

いつものようにHMVのサイトで輸入CD新入荷の案内を見て何気なくポチッとしてほどなく届いたのが、右の画像スプラフォン SU 4077-2 。
今までスークのベートーヴェン全集は持っていないからと、その時は結構確信を持って買ったCDだったのですが、届いてみて何だか不安に・・・。ひょっとしたら前に日本盤で買っていたかもという気が猛烈にし出しました。

その漠然とした不安は、すぐに現実に。CD棚を探すこと数分。見つかりました左の画像、コロンビア COCQ 83953/56が。
これは スプラフォン原盤ですが、コロンビアから発売になっていたもので、MS(Mastersonic)といういわゆるリマスタリングCD。24-bit プロセッシングをしたものでした。ああ、MS、24-bit プロセッシングという最新のリマスタリングものがあるのに、従来盤を買ってしまうという何たる失態。気分が凹みます。
でも、確か何かHMVのサイトに美味しいことが書いてあったような記憶も・・・。そこで気を取り直してHMVのサイトをもう一度良く読んでみることにしました。すると、

このたび本家SUPRAPHONでもオリジナル・マスターより最新リマスタリングが入念に施され、音質向上がはかられているとのことですので、その効果に期待したいところです。

との記述がありました。実際、ライナーノーツを確認しますと2011年マスタリングとのこと。これはHMVの言葉ならずとも、音が期待できるではありませんか。
一方、コロンビアMS盤はと言いますと、残念ながら正確なマスタリングの日付はわからないのですが、2005年4月の発売ですからそれより以前は間違いのないこと。これでSU 4077-2を買った意義が見いだせて一安心しました。

そして、これはブログネタとしても使える~と。今回はそういうわけで、スークのベートーヴェン、ヴァイオリン・ソナタ全集。国内盤COCQ 83953/56と最新マスタリング輸入盤SU 4077-2の聴き比べということになりました。

一聴したところ、両者の違いはほとんどわかりません。コロンビア盤COCQ 83953/56の再生レベルの高さが目立つぐらいです。ですからちょっと聴くと、コロンビア盤の方が音に張りや勢いがあり聴き映えがします。
次に再生レベルをだいたい同じに合わせて聴き比べます。すると今度は順位が逆転。スプラフォン盤 SU 4077-2の音像の小ささ、音の密度の高さが途端に際立って参ります。
その結果ヴァイオリンの音像、ピアノの音像、ホールトーンなどが明確に分離し、音場がクリーンに見渡せるだけでなく、演奏の隈取までもがはっきりとしてきます。
日本盤はと言うと、大きめの音像が平面的に並んでいるだけで全体のピントが甘い感じです。その結果、響いている感じはしますが、全体的にワンワン響いていて、演奏者が神経を払って弾き分けている演奏の細部が見通せない感じになってしまっています。
これは、明らかにスプラフォン盤に軍配が上がりますね。マスタリングも新しければ良いというものでは決してないとは思いますが、どう音をまとめるかエンジニアのセンスが問われると思います。

さて、演奏にも少しは触れておかなければいけませんね。1969年度レコード・アカデミー賞受賞とのことですが、これまでこのブログでご紹介してきたような優しい美音のキャプソンや一小節、一音ごとに音色やリズムの仕掛けがあるカントロフ などとは違い、音はやや細めでフレージングやテンポはごく常識的。録音も年代のせいか、それほど音の伸びが感じられず、レンジも狭めですが、聴けば聴くほど味があると言いますか、ヴァイオリンの音よりも作品自体に聴いている方の気持ちが入って行く気がいたします。

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2012年5月19日 (土)

ブラームス ヴィオラ・ソナタ ロジャー・チェイス

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CRC 3063

ブラームス ヴィオラ・ソナタ    ロジャー・チェイス

ブラームス:
ヴィオラ・ソナタ(ヴァイオリンソナタ第2番の編曲)
ヴィオラ・ソナタ第1番
ヴィオラ・ソナタ第2番

ヴィオラ:ロジャー・チェイス    ピアノ:大滝美知子

使用楽器:Domenico Montagnana 1717
録音:2007年 5月

これはヴィオラの素晴らしい響きをたっぷりと味わうことのできるCDです。これぞ理想的なヴィオラのサウンドと言えるでしょう。柔らかでしっかりとした厚みがあって適度の脂が乗っている、そんなリッチな響きだと思います。
ロ ジャー・チェイスの名は恥ずかしながら不勉強でこれまで知りませんでした。名手ライオネル・ターティスの使用していたDomenico Montagnana 1717を弾いているということでこのCDに着目して聴いてみましたが、楽器だけでなくその腕前も大変素晴らしいものでした。
なめらかでしなやかなフレージング、重厚で温かみのある低音域。ゆったりと間を取った曲の運び方等々ブラームスのソナタを聴くのに彼の演奏はまさに理想的と言えると思います。
ロジャー・チェイスはロンドン生まれ。英国王立音楽大学にてバーナード・ショア、カナダにてスティーヴン・シュタリクに師事しました。
デ ビュー公演はイギリス室内管弦楽団と共演、ロイヤル・アルバート・ホールでのプロムナード・コンサートではソリストとして出演。また、スヒーアモニック オーフ(オランダ)、コンソナンス(フランス)、カザルマッジョーレ(イタリア)、米ボードイン音楽祭等数々の音楽祭にて演奏・指導にあたっています。 ナッシュ・アンサンブルに20年間在籍する傍ら、ロンドン・シンフォニエッタ、ロンドン室内管弦楽団他、多数の楽団に所属。英国音楽王立大学、ギルドホー ルスクール、王立ノーザン音楽大学、オベリン大学で教鞭を取り、現在はルーズベルト大学教授。

ブラームスのソナタは最初クラリネットソナタとして作曲されたものを作曲者自身がヴィオラ用に編曲したものですが、ヴィオラオリジナルと言っても良 いほど何の違和感もなく聴けますね。このCDではヴァイオリンソナタ第2番をチェイス自身がヴィオラ用に編曲して弾いていますが、確かにこのソナタは3曲 のソナタの中では最もヴィオラに向いていそうな楽想ですね。こちらも原曲を知らなければオリジナル曲と間違うほどフィットしています。リサイタル等でもっ と弾かれてもよさそうな気がいたします。

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2012年5月18日 (金)

ポートレート ヒラリー・ハーン

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UCBG-1209

ポートレート ヒラリー・ハーン

ドキュメンタリー
ベルリン・フィルハーモニーの舞台裏(ベルリン)
カーティス音楽院(フィラデルフィア)
『イエロー・ラウンジ』でのバッハ演奏(ドレスデン)
アビー・ロード・スタジオにおけるレコーディング(ロンドン)
香港、ベルリン

コンサート映像
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲   ケント・ナガノ指揮 ベルリン・ドイツ交響楽団
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタト長調 K.301

使用楽器:Jean Baptiste Vuillaume 1864

今回はヒラリー・ハーンのDVDをご紹介いたしましょう。2003年から2004年にかけて収録され、2005年1月にドイツのテレビ局で放映されたベネディクト・ミロウ監督のドキュメンタリー・フィルムです。
公演前後の舞台裏、リハーサル、母校カーティス音楽院にカメラが入って行き、世界中を飛び回る売れっ子のヴァイオリニストの素顔に迫ります。
何 と言っても嬉しいのは随所に入る演奏シーン。彼女の愛器であるJ.B.Vuillaumeもたっぷりと見ることができます。更に、ボーナス映像として、コ ルンゴルトの協奏曲全曲とモーツァルトのヴァイオリン・ソナタがノーカットで収録されています。これはヒラリー・ハーンならずとも興味深いDVDだと思い ます。
彼女の魅力はまず端正な演奏スタイルではないでしょうか。ですから、モーツァルトにはまさにうってつけだと思います。
そして軽やかで正確なテクニック。弓はいくぶん張り気味ですが、全く押さえつけている風ではありません。コルンゴルトの3楽章のスピード感、切れ味には全く舌を巻かされます。
逆にあざとさのようなものが欲しい音楽の場合はちょっとあっさりし過ぎかもしれません、パガニーニの協奏曲第1番のCDを聴いたときに、文句なく上手いんだけれど何故か物足りなく思った記憶があります。大口上を述べるみたいな大袈裟なところがあってもこの曲の場合は良いのだと思いますが、彼女の美意識はそういった弾き方は許さないのだと思います。
そして、彼女のJ.S.バッハですが、これは今風のピリオド奏法を取り入れたものではありません。かと言って、シェリングや江藤俊哉のような巨匠スタイルの どっしりとしたものでもありません。古楽器奏法から見れば、テンポはゆっくり目、フレーズは粘り気味ですが、巨匠スタイルからすると、それよりはもっと軽 く、しなやかです。ヒラリー・ハーンのバッハは彼女独特の世界を持っていると言えるでしょう。日本人はとかくバッハを厳格で神聖なもののように思いがちですが、彼女の弾くバッハはそのようないかめしさは無く、優しくて聴いていると心に染み入るバッハだと思います。そのようなバッハも魅力的ですね。

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2012年5月17日 (木)

エレジー&ラプソディ カテリーナ・マヌーキアン

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VICC-60118 (輸入盤 MAR 215

エレジー&ラプソディ   カテリーナ・マヌーキアン

イザイ::悲劇的な詩op.12
ドヴォルザーク/クライスラー:スラヴ舞曲第1番
ドヴォルザーク/クライスラー:スラヴ舞曲第2番
チャイコフスキー: 憂うつなセレナードop.26
ブラームス/ヨアヒム:ハンガリー舞曲第2番
ショパン/ミルシテイン:ノクターン第20番嬰ハ短調
ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ第1番op.4
グラナドス/クライスラー:スペイン舞曲からアンダルーサ
ワインツバイク:ダンス・オブ・マサダ
コミタス:鶴(クレイン)
パパジャニャン:エレジー(ハチャトリアンに捧ぐ)
パゴダザリアン:ラプソディ

ヴァイオリン:カテリーナ・マヌーキアン    ピアノ:江口 玲
使用楽器:Jean Baptiste Vuillaume 1861 (イザイ所有)
録音:1997年7月

カテリーナ・マヌーキアンはカナダ、トロント生まれ。アルメニア人ヴァイオリニストの父と日本人ヴァイオリニストの母をもち、両親から手ほどきを受 けました。12歳のときにカナダ音楽コンクールで優勝。同年、バンクーバー交響楽団とパガニーニのヴァイオリン協奏曲を協演しました。1994年から 2000年まではニューヨークでドロシー・ディレイに師事。トロント大学を卒業後、同大学の大学院博士課程で哲学を専攻しました。

マヌーキアンが使用しているヴァイオリンはイザイが所有していたというJ.B.Vuillaume 。
Vuillaumeを使用しているソリストと言えばすぐにヒラリー・ハーンの名が思い浮かびますね。彼女ぐらいの格の奏者だったら、クレモナの銘器など すぐに持てそうだと思うのですが、それをそうしないのは、決してフランスの楽器をイタリアよりも格下だと思っていないからなのでしょう。実際、ヒラリーハーンも、このマヌーキアンも素晴らしい音ですよね。

このマヌーキアンのCDですが、楽器のせいだけではないとは思うのですが、大変しなやかですっきりとした透明感のあるヴァイオリンの音が聴けます。マイクは やや近めなのか、演奏者の息遣いなどはリアルに聴こえて来ますが、ヴァイオリンの音は滑らかで、高域も全く刺激の無い聴きやすいものになっています。
ゆっ たりとした曲での彼女の歌いぶりは実に品の良い趣味の良いものなのですが、例えば「華麗なるポロネーズ」などでは演奏にメリハリ、ダイナミックさがや乏し く、ちょっと物足りなさを感じます。しかし、父の祖国であるアルメニアの作曲家パゴダザリアンのラプソディになりますと一転、なりふり構わず情熱的な演奏 と化します。生まれはカナダでも父親の出身ということで血が騒いだのでしょうか、アルバムの最後を飾るのに相応しい盛り上がりをみせます。

ところで、イザイの悲劇的な詩を聴かれると、何だか途中から不思議な聴きなれない音がしてくると思います。それはこの曲ではヴァイオリンの4番線(通常Gで調弦)をFに調弦しているためなのです。

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2012年5月16日 (水)

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 アナ・チュマチェンコ

Chumachenco
ミュンヘン音楽大学自主制作 CD 24 

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 アナ・チュマチェンコ

録音:2001年 11月

こちらでチュマチェンコの弟子たちの演奏をご紹介しましたが、本日はチュマチェンコ本人の演奏CDです。
名 教師と言っても演奏家としてのピークを過ぎてしまったから教師をやっている人、演奏家としてよりも指導者としての方が向いているから指導者を志した人等、 色々なタイプの人がいると思うのですが、聴いていただければおわかりになると思いますが、このチュマチェンコの場合は間違いなく名演奏家=名教師というタ イプですね。

何も奇をてらったような表現をせず、これだけベートーヴェンをしみじみ聴かせるというのは演奏家として相当の腕前なのではないでしょうか。
まずヴァイオリンの音の美しさに耳を奪われます。と言ってもふわっとした軽い美音系ではなく、むしろ濃い音なのですが、それが決してコテコテではなく、純度の高い水晶のような透明感のある音なのです。私はまだ実際にチュマチェンコの生の音を聴いたことは無いのですが是非聴いてみたいものですね。
そして、アーティキュレーション、フレージングがいかなるときも明確です。その背景には間の取り方やルバートを相当緻密に計算しているのではないかと思いま す。緻密に計算しながらそれが自然に聴こえる。これが一番難しいことだと思います。緻密に計算されていない場合は、音符の長さや音型が行き当たりばったりの気まぐれなものになりがちです。そういった場合、ベートーヴェンやモーツァルトの協奏曲だと古典的なすっきりした曲調が損なわれてしまいます。もちろん 何もやらなければぶっきら棒で退屈な演奏になってしまうので、その塩梅が難しいのだと思います。

モーツァルトやベートーヴェンの協奏曲は奏者の真の実力、趣味、美的感覚などを裸にしてしまうので実に怖い音楽だと思います。
そういったことを考えると、オーケストラの入団試験で必ずモーツァルトの協奏曲が出題されるというのも良くわかりますね。

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